落語「桂竹千代と笑福亭希光の二人会」―粋と、お品と、教養と

 こんにちは。狛千心(こまちさね)です。きよしこの夜、いかがお過ごしでしょうか。
 先日落語を観て参りました。桂竹千代さんと笑福亭希光さんによる公演。大盛況でした。
 落語家さんの芸というものは大変勉強になることが多いものです。座布団一枚という舞台の上で、お扇子と手ぬぐいで全てを表現し、手の込んだ舞台装置も小道具もなしにあれだけ情景が目の前にはっきりと浮かんでくる演者の技術には脱帽いたします。
 落語には洒落が多く出てくるわけですが、それを理解するのには頭の回転の速さとどれだけ語彙を知っているかが関わってきますから、観る側にも高度なものが求められるように思います。長々説明すると野暮ったくなるわけで、直接言わなくても「ああ、アレね」と、ふふっと察して笑えるのが粋なのかなと考えたり。絶妙な塩梅の上に粋は成り立っているのかも知れませんね。若い燕衆に山吹色のちり紙をそっと渡せるような粋な婆やになりたいものです。
 それから下ネタと言いますか、男女の仲を描くシーンも度々落語には出てきますが、それがいやらしく下品にならないのも腕の見せ所なのではないでしょうか。それこそ「アレのことね」と大人になって分かるアレもあるでしょうから、そう思うと落語は大人になってからその面白さが分かる娯楽なのかも知れません。考えれば子どもは大人しくしていませんからね。じっとして人の話に耳を傾けられるのもまさに大人になった証なのでしょう。
 お二人の演目、どちらも歴史上の人物が出て参りました。御三家や徳川吉宗のことはさすがに知っておりましたが、アテルイという東北地方にいた英雄のことは恥ずかしながら存じ上げず、知っていればもっと様々なことに思いを馳せながら聞けたのかなとも思いました。でもこの機会に新しい歴史を知ることができましたし、興味を持って調べれば自分の教養となりますからね。面白おかしく楽しみながらお勉強にもなる落語は高尚なエンターテインメントといえるのではないでしょうか。噺家さんの分かりやすい語り口で印象にも残りますし。現代の東北の英雄・大谷翔平氏と抱き合わせでしかと記憶に刻み付けました。

※お茶漬けのパッケージみたいになっちゃった…。和風ということで…。


 さて、冬に落語というと『芝浜』が真っ先に浮かびます。私自身過去にこれを題材にお稽古をしたことがございまして、まぁとにかく物語が好きでして、クライマックスでは陰ながら支えてきたおかみさんに感情移入をして、し過ぎて、涙が頬をつたいます。充実感を感じながら大事な人と大晦日を迎え、温かい茶を飲みながら、一年を無事に終えようとする瞬間がどれだけ尊いことかを近年では特に思い知らされるわけでして、今も昔も本当大事なものの根っこは変わんないんだよなあなんて思いつつ、こちらの作品も師走の凛とした冷たい空気感を想像しながらしみじみと聞いてみたかったなと思いました。

 楽しいひとときをありがとうございました。ぜひまたいらしてくだませ。


 余談ではございますが、今回の公演のお客様はみなさま教養のある方が多かったようで、噺家さんより先に喋ってちょっとネタ晴らしをしてしまう一幕がございました。観客を巻き込みながらそれさえも面白くしてしまうにはさすがプロ。しかし、私達お客も先を焦っちゃなりませんね。ここは噺家さんにしっかりラストを飾っていただきましょう。
 
 どちらも、オチつかないと。
 お後がよろしいようで。
 ててんてんてん。(お囃子)
 


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